人材を育成したい
企業的農業経営を志向し、従業員を多数雇用するようになると、家族経営では思いもよらない問題が発生することが多くなる。
経営者の目が行き届かなくなり、経営者の右腕となる管理者の育成が課題となる。事業規模が拡大する中で、管理者育成を怠ると、逆に収益性が悪化していくケースも散見される。成長を検討する農業経営体において、人材育成は最も重要な課題であると認識すべきである。
意識して管理者を育成する
農業経営者は、意識的に管理者を育成していく必要がある。
管理者適性がある候補者を選び、まずは役割を明確にし、期待を具体的に伝えることが重要である。役割を伝えたら、課題認識を共有し、目標を設定し共有する。次に、目標を達成するために、どのような行動をとるべきかを管理者に検討してもらい、経営者とすりあわせしておくことが望ましい。
また経営者は、確実に管理者を育成するために、日常的に管理者に関わることは当然として、年次、四半期、月次、週次でフィードバックを実施し、できていることは褒め、できていないことは課題と解決策を、管理者と共有することがポイントとなる。
管理者は、経営者が黙っていても育成できるわけではない。経営者が意識的に管理者を気にかけ、声掛けすることで、管理者の意識は変わってくる。管理者は見守られていることを認識すると期待されていると意識し、経営者の考えについて理解を深め、現場での実行度を向上するなど、管理者としての自覚が高まり、意識が変わってくる。
役割があいまいなまま、肩書きだけ管理者になると、何をすべきか?が不明なまま作業に没頭し、成果や成長を促進する行動をできていないことが多い。これは、管理者が問題ということではなく、経営者がきちんと役割を明確化できていない、伝えられていないことが問題なのである。
スキルを明確化して育成する
農業経営者は、管理者候補に役割を伝えるとともに、役割を実践するうえで要求されるスキル体系について明示し、習得する機会をつくり、行動する場をつくり、評価することが重要となる。
管理者は、栽培に関するテクニカルスキルだけでは役割を果たすことはできない。全ての作業を自分一人でするわけではないので従業員を巻き込んで生産や改善を推進する。従業員の特性を把握してコミュニケーションを円滑化し、従業員に気持ちよく作業してもらうためのヒューマンスキルも必要となる。まずは「聞く力」をつけ、人の話をよく聞いて、信頼されるリーダーになれるか?がポイントとなる。