労務費ダウン
労務費ダウンは、最もベーシックな改善活動で、重要な取組である。賃率改善と労働生産性向上の2つが改善ポイントとなる。
労働生産性向上は労務費ダウンだけでなく、活用人員化にもつながり、より付加価値が高い作物の生産や、面積拡大への対応を可能にする。
適正時給で能力を引き出しコストダウン
労務費ダウンの1つ目のポイントは賃率改善である。
単純に時給を低下させることは改善とは言えない。やみくもに時給を切り下げると短期的な効果はあるが、次第に従業員のモチベーション低下を招き、作業パフォーマンスが低下し、逆にコストアップ要因となる。
賃率改善とは、適正な時給を設定し、動機づけを図ることで、作業パフォーマンスが向上し、作業単位当たりの労務費コスト低減につなげることである。
例えば、時給1,000円/hのパート従業員について、現状の包装作業に加えて作業改善の役割を追加したケースを考えてみる。これまで、時給を1,050円/hに上げても、作業改善により包装作業が、4時間で400袋から、4時間で440袋に10%増加した場合、1袋当たりコストは10円/袋から9.5円/袋となり、コストダウンできる。
また、これまで社員(時給換算で2,500円)がしていた作業を標準化し、スキルを必要としない作業に改善して、パート従業員(時給1,200円)が作業移管するケースも、コストダウンになる。
ロスを見える化して、労働生産性向上
労務費ダウンの2つ目のポイントは労働生産性向上である。
労働生産性とは、農作物を生産(OUTPUT)するために、作業者を何人、何時間を投入(INPUT)したかの効率をあらわす指標で、一般的には、OUTPUT÷INPUTで算出される。例えば、小松菜1,000袋を包装するために、4人で5時間作業したとすると、小松菜包装作業の労働生産性は、1,000袋÷20人・時と計算され、50袋/人・時となる。
労働生産性向上を図るためには、OUTPUTを増加するか、INPUTを削減する方向性が考えられる。
OUTPUTが一定だとすると、作業効率化によりINPUTである作業時間または人数を減少させる必要がある。作業効率化を図るためには、作業投入時間のうち、価値を創出している時間と、それ以外のロス時間に区分して、どんなロスがどの程度発生しているか?を見える化して、改善することが有効である。
定量化したロス区分ごとに、ロスの発生している現象と要因を調査し、優先順位付けして改善検討して、改善実施することがポイントとなる。また、改善実施後に成果が出ているか(ロス削減できているか)を定量的に定期的にモニタリングし、実効成果を見える化することも重要である。
作業する上で、問題点はたくさんあるが、ロスを区分化して定量的に見える化し、一つ一つのロスに対して、地道に改善を積み上げることで、30%の生産性向上を図ることは、難しいことではない。ロスと改善効果を見える化して、従業員を巻き込みながら、やりづらい点を改善することは、経営面においても、労働環境面においても有用である。
一方、機械化・自動化によるハード面からの改善も考えられる。一つの策ではあるが、その前に作業をいかにロスなく改善しておくか?が最も重要であり、無駄な投資を抑制することにもつながる。